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ムルチ
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ムルチという漫画作品の作者である故・三隅健さんの一日だけの個展を見に行った。ムルチを読んだことはなかったが、ボギーさんのブログや西鉄の中吊り広告でその存在を知っていて、ずっと気になっている漫画であった。

先日、天神中央公園で食のイベントが行われていたとき、そこに出店している店の前にムルチの看板が立っていた。反射的に、あ、ムルチだ、と声に出したところ、店の奥さんがムルチを知ってるの?と話しかけてきた。その方は三隅健さんの母親のようで、恐らくは僕を息子の知り合いか何かだと思われたのだろう。こういう表現が正しいかは分からないけど、彼女は少し僕にすがるような雰囲気で、僕を繋ぎとめようとしてきた。多分、息子の話を一緒にできる人を追い求めているような感じだったと思う。とはいえ、僕からは当然ながら息子さんについて何も出てこない。少し申し訳ない気持ちになりながら、その場を去るしかなかった。翌日本屋でムルチを探したけど置いてなく、そのまま時が流れていた矢先、またしても西鉄の中吊り広告で今日の個展のことを知ったのだった。

そして今日、佳維と花の3人で、個展を見に行った。漫画の原画だけでなく、色彩豊かな絵画作品や、中学生時代の美術の作品(美術の先生がずっと残して、生徒へ良き見本として見せていたらしい)など、本当に才能豊かな人だったんだなと思える作品が並んでいた。特に「天使のチロル」という作品にはストーリーも付記されていて、そのまま絵本にできそうなくらいファンタジックな内容だった。花に読み聞かせながら見て回ると、彼女も真剣な目で楽しんでいて、何回も「もう一回!」と催促するほどだった。佳維は、テーブルに置いてあったムルチを最後まで読んだようで、面白かった!と言って、ノートに「ムルチは虫ですか?」という質問まで書いていた。

会場はとても温かい雰囲気で、コーヒーやお菓子まで出していただき、ゆっくり過ごすことができた。そして、あの日声をかけてくれたお母様もいた。もちろん覚えてはいらっしゃらないが、花に優しく声をかけてくれるなど、この個展の時間と、来てくれた人との時間を、たいせつに慈しむように過ごされているのが分かった。他の方との会話で、本当にたくさんの方が来てくれたことを「伝わってたんだなって嬉しかった」とおっしゃっているのが聞こえて、良かったなーと心の中で頷いた。

帰り際には、恐らくは三隅健さんの奥さんと弟さんだと思うけど、花のベビーカーを抱えてくれて、ギャラリーの軒先までお見送りしてくれた。そして、何度も御礼を述べていただいて、何とムルチをプレゼントまでしてくださった。ギャラリーに入った瞬間からお見送りの最後まで、ずっと温かな空気が流れていて、そのことを思い出しただけで少し泣きそうになる。今日やっと、三隅健さんという才能に出会えて、心豊かな時間を過ごせたことに、心から感謝したい。

by rin_magazine | 2014-11-17 01:10 | 日々のできごと | Comments(0)


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