君のいない世界
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I.N.A.さんの「君のいない世界」読了。先日仕事で行った世田谷ものづくり学校にI.N.A.さんのスタジオがあり、そこの壁にこの本のポスターが貼ってあったのを見て購入。あっという間に読み終わったけど、本当にこの本に出会えて良かった。偶然の導きに感謝。


I.N.A.さんはhideの共同プロデューサーでもあり、一番近くでhideの楽曲制作に携わってきた人。この本の大半は「HIDE YOUR FACE」と「PSYENCE」という2枚のアルバム制作における詳細な過程に費やされているのだけど、このアルバムたちをちゃんと聴いていた人なら絶対に心底楽しめる本だと思う。難しい音楽用語もちゃんとI.N.A.さんが分かりやすく書いているし、あの曲のあの部分にはそんな仕掛けがあったのかとか、この歌詞にはそんな出来事が影響を及ぼしていたのかとか、知らなかったエピソードがたくさん散りばめられている。この本を読んだ後にまたアルバムを聴くとさらに深く豊かに響くし、もはやこの本の内容も作品の一部と思えるくらい。


I.N.A.さんの証言から、2人がやっていた音楽制作の行程がいかに当時の日本の、いや世界の音楽シーンで時代を先取りしていたかも理詰めで理解できるし、肌身で感じたあのアルバムたちの面白さの理由がロジカルに補完されていくのも本当に面白い体験だった。


その一方でこの本は、I.N.A.さんという一人の音楽家自身の成長譚でもあり、hideという親友と過ごした日々の青春物語でもあったりする。そして、ロックスターとしてのhideしかほとんど知らない我々のようなファンにとって、人間・松本秀人(と、怪獣ヒデラ・笑)のことを、実際にそばにいる友達のように感じることのできる稀有な本にもなっている。本当に本当に、hideに少しでも影響を受けた人には全員読んでほしいと思うくらいにオススメです。 


I.N.A.さんに、素晴らしい本を書いてくれてありがとうございますと感謝の気持ちを伝えたいです。


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# by rin_magazine | 2018-12-15 18:53 | 読んだ本の感想 | Comments(0)
植本一子「フェルメール」


植本一子さん「フェルメール」読了。世界各地に散らばっている現存のフェルメール作品35点を、実際にその目で観に行き、写真と文章で綴るというユニークな本。ここ数年、極めてパーソナルな作品を残してきた彼女の次なる展開としては意外なもので、少しの違和感や戸惑いを感じながら読み進める。でも恐らくそれは彼女自身の戸惑いであり、この旅に彼女が少しずつ心と身体を慣らしていく過程や変化もダイレクトに伝わり、それを生々しく追体験させてもらえるような不思議な感覚があった。特に写真家ならではの視点、対象への対峙の仕方は興味深く、作品とギャラリーに来ているお客さんとの切り取りが面白い。アートへの関わりにルールなどないことに改めて気付かせてくれるところもある。


とはいえ、全体的にはやはりよそ行き感もあり、本人もあとがきで書いていたけど、このキャスティングが「なぜ私なのか?」ということの答えは見つからなかった。あとがきとありながらその文章が旅に出る前に書いた文章であることが象徴的で、あるいはその答えはこの写真と文章から感じ取るべきものなのかもしれない。写真と文章のページが離れていて、双方を行き来するという読書体験の繰り返しの中で浮かび上がるものもあるだろうし、今上野でやっているフェルメール展を見て初めて感じることもあるだろう。


余談だけどこの旅は一子さんがご主人のECDさんを亡くされて間もない頃のものであり、追憶や感傷などの物語をいくらでも帯びさせることはできたと思うけど、ほとんどそこを頼りにせずに淡々と感情を綴るところに、植本一子の凄みを改めて感じたりもする。この考察自体が野暮だとは思うけれど…。


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# by rin_magazine | 2018-11-12 12:33 | 読んだ本の感想 | Comments(0)
小さな傷
うちの会社には、平川動物園でホワイトタイガーに襲われた方と同じ苗字の社員がいる。昨日、彼の帰り際にある別の社員が「●●さん、虎に気をつけて」と笑いながら話しているのを聞いて、小さく傷ついた。人の死を、身近な人同士の笑いのタネにしているからだろうか。言った本人に悪意はなかっただろうし、単純に鹿児島の馴染みある動物園のことだから、自分が感情移入しすぎているせいかもしれない。それを温度差というのだろうが、何だろうこの気分の悪さは。小さくというが、案外深く傷ついているのだろう。こうやってブログに書きたくなるくらいに。

学生時代、同級生のあかねさんがバイク事故で亡くなったときのことを思い出した。あかねさんは、俺がバイトしているレンタルビデオ屋でビデオを借りた帰りにバイク事故で亡くなった。数日後、バイトに行ったらそこのおっさん店長が、警察から返却されたそのビデオを持って「化けて出るぞ~」と冗談めかしているのを聞いて、戦慄が走ったのを思い出した。まだ若かった自分は、そこで店長に怒りを表すことも諌めることもできなかった。「死んだの、俺の友達なんですよ」となぜその場で言えなかったのか、あとで何回も悔やんだ。人の死を笑いに転化されるのは気持ち良いものではない。それは下品なことだ。自分はそんなことをしていないだろうか。自戒を込めて。

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# by rin_magazine | 2018-10-10 05:11 | 日々のできごと | Comments(0)
息子とYoutube

個人のスマホをたまに息子に使わせているのだが、彼はよくYoutubeで動画を見ている。Gmailと同期させているため、履歴で彼がどんな動画を見ているかもすべて伝わっている。先日はちょっとエッチな動画を見ていたっぽいので、もう5年生だしそういうことにも興味が出てくるんだなーと微笑ましく思いつつ、「何見てるか分かるんだからねー、いろいろ興味あるのは分かるけどさ」などと牽制を入れている(笑)。最近は見るだけでは飽き足らないようでいろんな動画にコメントを付けており、傍目には私がコメントしたように見えるので止めてくれと言っているのだが、ちょこちょこコメントに返信が来るのですぐバレる。

先日、そんな感じで彼がコメントした動画に返信が来たのでアクセスしてみると、「暗殺先生」の映画に使われている曲の動画だった。なかなかに良い曲で、彼はその曲について、同じようにその曲を好きな人たちとコメントでやりとりをしていた。それを見て、いろいろ弊害はあるものの、こういうのも悪くないなーという気持ちになった。

自分の子がどういうものに興味があるかを知れること。彼が世界と繋がっている瞬間を見届けられること。それってもしかしたら凄いことなんじゃないかなぁ。かつての中学生くらいの自分が、雑誌の投書やラジオの投稿で世界と繋がれたような気がしたあの感動を、こうしてスマホ一本で彼は今体験している。しかもそれをしれっと見届けている自分。何か幸せ…。

小さいと思っていた彼も気がつけば10歳で、無邪気に学校での出来事を自分から話してくれるようなことはもはやなし。宿題は相変わらずほとんどしないし、小数点の割り算ができないのを悩んでるらしいが向上心もない。いろいろ心配にもなるし、スマホ中毒みたいになりそうな香りはプンプンしているけど…それでも。そうやって自分の好きな世界を見つけて、直接でなくてもいいから、これからもYoutubeのコメントで教えてくれよ、と思う自分がいる。


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# by rin_magazine | 2018-07-19 00:40 | 子どもたちの成長記録 | Comments(0)
I Care Because You Do

どうも気分がすぐれないのは、降り止まぬ雨のせいなのか、麻原死刑執行のニュースのせいなのか。テレビでは繰り返し、あの未曾有の事件の映像が流れている。自覚の有無はさておき、90年代に多感な時期を過ごした世代にとって、やはりあの事件は深い影を落とすものだったのかもしれないね、なんて奥さんと話していたこの週末。

たまたま古本屋で西島大介さんの「I Care Because You Do」という漫画を手に取った。予備知識なし。袋とじで立ち読みも不可。買う必要性は皆無に等しかったが、 何となく気になって購入した。100円だし。そして読み始めて驚いた。最初のページにいきなり「麻原彰晃」の文字。そして「しょーこー、しょーこー、しょこ、しょこ、しょーこー」、まさにこの週末何度もリフレインしたあのリズムが、「テクノっぽくね?」なんて会話で語られる90年代の総括漫画であった。しかも、この漫画の中で90年代を象徴するアイコンは、新世紀エヴァンゲリオン、エイフェックス・ツイン、X JAPAN。何なのだこの“呼ばれた”感じ。夢中になってあっという間に読み終える。……結論、これは俺のための漫画だ…。

サブカル周りで散々良い夢を見させてもらった90年代の名残り。オウムも酒鬼薔薇も、現実でありながらどこか遠くの出来事だった。今ほどネットが浸透していたとしたら、きっとそういう訳にはいかなかっただろう。この漫画は、そんな夢心地なあの頃の香りを残しながら、一気に現実に引き戻される2000年代の憂鬱も正面から描き、見事に落とし前をつけている。未来は思い描いたようにはいかない。それでも、悪くない未来がここにある。心震えるとはこのことだ。同時代的な喜びとはこのことだ。90年代、あの未曾有の事件を横目にしながら夢中になった自分の青春が、この一冊で浄化され、意味付けされていくような感覚。それがこのタイミングで訪れたのは、いったい何の因果なのだろう。嬉しくもあり、どこか切なくもある一冊との出会い。まさかこんなことがあるなんてね。

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# by rin_magazine | 2018-07-09 00:46 | 読んだ本の感想 | Comments(0)
王貞治ベースボールミュージアム
カイと一緒にヤフオクドームの中にある王貞治ベースボールミュージアムに行ってきた​。ホークス選手の高校球児時代をテーマにした企画展をやっていて、それが今週末までだったのだ。カイがこういうのに誘ってくれるのは久しぶりだから嬉しい。

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ヤフオクドームに着くと、意外にも大勢の人だかり。そうか、今日は安室奈美恵のコンサートなのだ。安室ファンを横目に 王貞治ミュージアムへ入場すると、リハーサル中の音漏れが聞こえてきてちょっとラッキー。ミュージアムは、王監督の生い立ちから、高校時代の活躍、入団の経緯、入団から引退 までの数々の記録 、そして監督時代のエピソードなどが動画や記事と一緒に展示されていた。2008年、前職でホークス関連の仕事をしていた時に期せずして立ち会えた王監督の勇退会見も流れていて、懐かしく思ったり。

目的のホークス戦士の高校時代もなかなか興味深く、今宮と東浜が対戦したときに今宮が試合中に東浜の投げていたツーシームの投げ方を真似てその試合でいきなり投げ始めたとか、本多選手は鹿児島実業の歴史上初の非鹿児島県出身キャプテンだとか、知らなかったエピソードも知ることができた。あと、プロの球速を体験できるコーナーとか、自分の球速やスイングスピードを測れるコーナーもあって、カイも一緒に楽しんだ。何か、親子って感じ!!

帰りのバスでカイがクールに、「今日は付き合ってくれてありがとう」と言ってくれた。何の何の! いくらでも^^ 今年もいっぱい高校野球やプロ野球を観に行こうぜ。
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# by rin_magazine | 2018-02-26 01:02 | 子どもたちの成長記録 | Comments(0)
1/2成人式
今週末、小4の息子の学校で「1/2成人式」というものが行われる。そういうものがある、というのは数年前から聞いたことがあった。二十歳の半分で1/2成人式。自分が子どものときにはなかったものだが、そういうのも時代の流れなのだろうと、一つの学校行事くらいの認識で深くは考えていなかった。学校からのプリントを読むと、「お子様のスピーチを聞いた後に、がっちりと握手を交わす」とか、子どもたちに内緒で「これからも命や家族の絆を大切に生きていくぞ、と思ってもらえるような手紙を渡す」とか、親側にもいろいろと仕込みが用意されており、何だかなーとどこかで白々しくも思いながら、子どものためにそのつもりで準備はしているのである。

しかしながら、そのイベントを今週末に迎えたここ数日、息子が仕切りに「1/2成人式に出たくない」「休みたい」を繰り返している。先週はインフルエンザで1週間休んだのだが、「もう1回インフルエンザになりたい」とか「熱が何度出たら休める?」とか、しつこく絡んでくる。家で仕事している時にもしつこく絡んでくるので「いい加減しつこい」と言ったら、今度は号泣するのである。そこまでかよ…と思い、ちょっと気分を落ち着かせてから、なぜ嫌なのかを聞いてみた。まとめるとこんな感じである。

「生まれてからこれまでのことと、将来の夢と、家族へのメッセージをみんなの前で言わないといけない」
「みんなの前で言う意味が分からない」
「そんなの二十歳の時に言えばいい」
「それを強制されるのが嫌だ。学校はアメリカ政府で児童は日本政府だ」

最後のはちょっとウケた。息子のいうことはもっともなので、そんなに行きたくないなら行かなくても良いよ、と話した。奥さんはインフルエンザで寝ていたが、多分反対はしないだろう。本当に、休みたいなら休めば良いと思う。心から嫌なものに、無理やり出る必要はない。彼の理由はまっとうだ。

1/2成人式のことを調べたら、やはり世間でも賛否両論あるらしい。感動の押し付けに感謝の強制、子どもたちのためというより親のため、被虐待児童への配慮など、いろいろと複雑な背景が絡む。何の疑念も持たない人たちは、ある種幸せな家庭生活を送ってくることができた人たちなのかもしれない。自分の場合、少なくとも親への感謝というのは強制されるものではないと思う。あるいは決して強制されているわけではないのかもしれない。でも、感謝の気持ちを述べることが求められている、そうすることで学校の先生や親が喜ぶ(であろう)という気配がきっと漂っていて、そういうことに息子が敏感になっているのは想像に難くない。

だから、行かなくてもいいよ、カイちん。土曜日なんだ。堂々と休みなさい。俺と静香が書いたメッセージは、君からのメッセージへの返事ではないから。ある種の付き合いで書いただけだし、そうでなくても、ここに書いたメッセージはいつも君に伝えてるから。好きなこと、夢中になれることを大切にしてください。やりたくないことは、やらないでください。元気に生きていてくれれば、俺たちはそれだけで本当に充分です。

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よほど行きたくないらしい。

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# by rin_magazine | 2018-01-29 23:12 | 日々のできごと | Comments(0)
ECDさんの訃報
ECDこと石田さんの訃報が、予想以上に堪えている。

昨年、石田さんが書いた本と、奥さんである植本一子さんの本を好んでよく読んでいた。どちらも大きなテーマは「家族」で、2人の本を読めばもはや、石田家を他人のように思うことの方が難しい。特に一子さんの本はなかなかに重く、正直にしか生きられない人のむき出しの表現に圧倒され、でもどこか救われるような感覚もある不思議な読書体験だった。

彼女の最新刊である『降伏の記録』には、2人の本の共通の装丁家でもある鈴木成一さんが一子さんにかけた言葉として、こんな言葉が綴られている。「お前は石田さんの文体を受け継いだんだ、それはすごいことなんだ」。だから、石田さんがいなければ、彼女の本に出会うこともなかっただろう。

ラッパーとしての石田さんの全盛期はほとんど知らないけれど、反戦・反原発活動や、彼の文章から感じられる徹底したフラットな考え方などを含め、一本筋の通った揺るがぬ生き方にどこかで憧れていました。長い闘病生活、本当にお疲れ様でした。

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# by rin_magazine | 2018-01-26 18:18 | 日々のできごと | Comments(0)
君の名は
テレビで初鑑賞。途中やや混乱したけれど、なかなか面白かった。協賛各社もアニメCMやパロディCMを作っていて、Twitterでも盛り上がっていた。こういう風に全国一斉にお祭り状態になるコンテンツは、やはり事前に映画館で観ておくべきだったなーと反省。いろいろネタも仕込んでおけたはずなので。It’s important to be trendy.

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# by rin_magazine | 2018-01-03 23:39 | 観た映画の感想 | Comments(0)
新年読書
新年が明けた。朝イチで大濠公園を一周ランニング。午後からカイと花の3人で護国神社へ初詣で。静香は調子悪く、今日はほとんど起き上がれなかった。いろんなことにとらわれて、結局また静香の体調に真剣に目を向けられていない。相変わらず安心できるわけではないのに。静香はお年玉をあげるためだけに起き上がってきた。カイが心待ちにしているからだ。彼女はいつも、大切なことを見誤らないし、そういう時に自分を優先しない。

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この連休中に本を2冊読んだ。一つは竹井正和さんの「きょう、反比例」という本。竹井さんは、出版社リトルモアやFOILの社長をしてきた方。アート系の出版物が多いのでそういう出自の人かと思っていたら全然そうでなかったようで、被差別部落出身で社会派の出版社を経ていたことを知って驚いた。12年前の本だけど、仕事や人間関係における本質に迫るもので、新年に読めたのは良かったかも。これを読んで、大学時代に仕事でもないのに興味のある人に連絡を取ってバンバン会いに行っていたのを思い出したけど、今の自分にそこまでの情熱はない。でも、中川さんの日記にも書いてたけど、俺たち「まだイケる年齢」なんだから、頑張ってみよう。

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もう一冊は「夫のちんぽが入らない」。どうしてもタイトルに意識が集中してしまいがちだが、何より文章が面白く一気読みしてしまった。夫婦での性交渉ができないということが長く人生に影を落としている話で、その叫びには切実なものがある。伏線の回収もお見事。気になったのはこの著者から見た男性評がどうも甘いこと。著者の旦那さんも、厳しくしていた同僚の男性教師も、描かれている場面からしか判断し得ないが相当に不誠実で抑圧的に見える(この辺の感覚は分かれるところだと思うけど)。ところが著者は、自分の精神が安定しだすと急に彼らを美化してしまう傾向があり、いろいろ心配。でもまあ本人が幸せならそれで良いか。こういう家族モノを最近嗜好してよく読んでいるが、植本一子さんの本にも通じるものがあり、調べたら2人は対談などもしている様子。肉親であるが故の苦悩を経験している人たちが今こうして自伝的な形で言語化していくのは、時代的なものなのかもしれない。

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# by rin_magazine | 2018-01-01 23:32 | 読んだ本の感想 | Comments(0)