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この世界の片隅に
 最近読んだ雑誌や漫画の話題を少々。

●STUDIO VOICE

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 久しぶりに購入。理由は相対性理論の特集だったから。メディアへの露出がほとんどなく、東京以外でのライブも現状のところほとんどないので、その実体は謎に包まれているバンド。今回の特集では、鈴木慶一さんや菊地成孔などといった周辺ミュージシャンによる証言、ボーカルやくしまるえつこさんの顔がはっきりとは写っていないファッションフォト、この特集を手掛けた北沢夏音さんのルポルタージュのようなものなどで構成されている。特にこの北沢さんのルポが面白かった。実際に彼らにインタビューをしているのだけど、いわゆる質疑応答形式の構成にはせず、メンバー一人一人のコメントを時折挟み込む形で書き下ろしている。その挟み込むコメントのセレクトが、メンバー個々のキャラクターが分かりそうで分からないギリギリのポイントを突いていて、何だかとってもそそられるのだ。結果、相対性理論の謎はほとんど解けないままに終わるんだけど、それで良しと思える特集内容だった。第一、一冊の雑誌で分かってしまってもつまらないし、どうせならまだまだ騙されていたいと思う。


●この世界の片隅に(上・中・下)/こうの史代

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 1カ月ほど前に購入していた3冊を、ゆっくり読みほした。「夕凪の街、桜の国」のこうの史代さんが、再び戦争と広島をテーマに描いた作品。読み終わってすぐに、もう一度最初からじっくりと読み直したくなる、そんな作品だった。戦争を知らない世代が知らされる“戦争”は、例えば「裸足のゲン」のように恐ろしく、おどろおどろしく、悲惨な部分が強調されたものが多い。もちろんそれも知るべきことであり、語り継ぐべきことではあるのだろうけど、経験した者と、そうでない者との間には、埋めようのない落差がどうしても生じてしまう。この漫画は、戦争のことを分からせようとしていない。戦争や原爆や広島をテーマにしているのに、原爆の瞬間が描かれるのはほんの一コマだけだ。戦争という存在を、否定も肯定もせず、ただ淡々とその時代を生きた個人に寄り添って描かれる。そして寄り添っているからこそ、戦争がもたらす痛みが、もしかすると「裸足のゲン」以上の強度を持って伝わってくる。

 こうの史代さんという方は、本当にすごい方だなぁ。戦争を知らない世代が描くものとして、すごく誠実な態度だと思う。しかも、戦争を知らない世代だということを決して言い訳にしない。諦めてもいない。それぞれの巻末には「間違っていたなら教えて下さい いまのうちに」と書いてあって、その姿勢がまた泣ける。同時に、戦争を語れる人がどんどん少なくなっている事実と向き合わされる。僕にできることは、せめてこの漫画を読んだことをブログに書いて、誰かに知ってもらうきっかけを作ることだけだなぁ。今度、もう一度じっくり読み直そう。
by rin_magazine | 2009-06-29 21:56 | 読んだ本の感想 | Comments(0)


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